IDCの5G市場調査

国内でも2020年3月に商用サービスが始まった5G(第5世代移動通信システム)は、超高速、超低遅延、多数同時接続を特徴として、新たなモバイル体験をもたらす通信技術として高い関心を集めています。また、5Gは消費者だけでなく企業においても、DX(デジタルトランスフォーメーション)実現に重要な役割を果たす技術として期待されています。

IDCでは、5Gを通信サービスやスマートフォンを始めとするクライアントデバイス、基地局やトランスポートなどのインフラストラクチャといった多角的な視点で調査分析しています。また、5Gと4K/8K、AR/VR、AIなどの技術を組み合わることで広がる5Gのユースケースや、スマートシティ、スマートファクトリー、モビリティなどのイノベーション領域における5Gの役割といった視点からも分析しています。さらに、移動体通信事業者が提供する商用5Gサービスに加えて、企業や自治体などが構築するローカル5Gの動向についても分析しています。
Note:
  • 5Gネットワークインフラストラクチャ市場は、5Gサービス基盤に用いる5G RAN、5Gコアネットワーク、ルーター、イーサネットスイッチ、光伝送装置で構成される。
5Gの現在地

2020年3月に始まった国内商用5Gサービスは、サービス提供エリアの拡張を進めています。2023年度(会計年)末には人口カバー率95%、2025年度(会計年)末には97%達成に向けてサービス提供エリアの整備が進められています。

また、既存の4G/LTEインフラストラクチャを利用する5G NSA(5G Non-Standalone)構成で始まった国内の5Gサービスですが、2021年から5G SA(5G Standalone)構成でのサービスが順次始まっており、さらなる5Gの活用が見込まれます。

標準化動向に目を向けてみると、3GPP(Third Generation Partnership Project)のリリース18の内容が承認されるなど、産業用途での利用を見据えた拡張が進んでいます。

ローカル5Gも、実証実験が多く進められており、電波特性やユースケースの検証が進んでいます。コストを抑えたローカル5Gソリューションが相次いで投入されるなど、導入のハードルは下がりつつあり、ローカル5Gのさらなる進展に期待が寄せられています。

5Gインフラストラクチャの整備は、国内でも商用サービス開始前の2019年から着実に進められています。

国内モバイル通信事業者は、5G基地局やトランスポートネットワーク、そして5G SA構成でのサービスに必要な5Gコアなどへの設備投資を進めています。IDCでは、国内5Gネットワークインフラストラクチャ市場における2022年の市場規模は、3,800億円あまりで、2020年~2025年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は9.9%と予測しています。

IDCでは5Gのネットワークアーキテクチャにも注目しています。5G RANでは、マルチベンダー構成を実現するRANのオープン化が進んでいます。オープン化の中ではRANの機能コンポーネントの明確な分離がなされていますが、RU(Radio Unit)は、5Gエリアカバー率を高め、かつ「穴のない」稠密なエリア設計を実現するために非常に多く配備する必要があります。CU(Central Unit)/DU(Distributed Unit)は、CU/DUの集約化や汎用サーバーの活用、仮想化/コンテナ化が進むことで投資の効率化が進むと予測しています。

IDCでは、商用5Gサービスを実現する5Gネットワークインフラストラクチャに関する調査を行っています。5G基地局や5Gコア、ルーターやイーサネットスイッチ、オプティカルなどの製品分野別分析や、5Gネットワークインフラストラクチャでは不可欠なネットワーク仮想化/自動化(NFV、SDN)に関しても調査しています。


国内でも2020年3月に始まった商用の5Gサービスは、着実に普及の歩みを進めています。2021年の5Gの回線数は、前年から4倍に達しモバイル通信回線全体に占める割合は14%を超えています。既存のスマートデバイス用途のLTE回線の置き換えと共に、新たなIoT機器の接続需要の増加などによって普及が進むと予測しています。

IDCでは、5Gを含むモバイル通信サービス市場を、世代別(3G/4G/5G)や個人/法人別に、世界70か国以上について調査しています。











5Gは、消費者としてのデジタル体験を高めるだけでなく、企業の業務効率化やデジタルトランスフォーメーション(DX)に活用することが期待されています。たとえば、製造現場における業務の自動化現場業務の自動化や遠隔制御、現場の可視化といったスマートファクトリーを実現する重要な技術として捉えられています。

こうした企業のDX実現に当たっては、モバイル通信事業者が提供するパブリック5Gサービスに加えて、企業が専用の5G環境を導入できるローカル5Gも重要な役割を担っています。より低廉なローカル5Gソリューションやマネージドサービスが登場し、さらに多くのPOCが実施されると共に、実環境への導入も進むことが期待されています。

IDCでは、5G市場を産業領域での活用という視点でも調査しています。企業の5G利用動向に関する調査や、5G関連ITサプライヤーの動向、産業分野別やユースケース別分析、さらには法人向け5G関連IT市場について分析しています。